2011年7月7日木曜日

9月20日(月)誰にも会わない山の中を走る

・朝、10時に出発した。今日の予定は、まず近くにあるHarst城を見学、それからゴーダまで昨日、走ってきた道を再び逆に北上してそこでガソリンを入れる。そして、ゴーダの更に先のLucia近くにあるナショナル・パークで少しハイキングを楽しみ、その後で海を離れて山越えして、Jolong辺りまで山の中をドライブしてから、何処かその近くの村に一泊しようと考えた。


Harst城は丘の上にそびえ立つ姿が、下の海沿いの道路から良く見える。ハイウェイを降りて、田舎道を10分、城に向かって走ると大きなゲートがあって、これまた1000台は駐車できると思われる巨大な駐車場がある。できるだけ日陰を探して車を停める。大きなビジターセンターが入り口になっている。既に大勢の観光客で一杯だった。そこで6種類あるツアーのチケット(どれも$24)を購入する仕組みになっている。城はここに有るのではなく、ツアー毎に大型バスに乗って出かけるのである。


Harst城は実は皇族の住む城ではなく、アメリカの金持ちの作った悪趣味の象徴の様な別荘である。広大な建物と手の凝った庭が有名で、どのガイド・ブックにも乗っている。使ってある材料は、すべて本物で模造品ではないとのことで、それなりの風格が有るらしい。ヨーロッパの城よりも金と時間が掛かっているとのことであった。アメリカ人はこのようなドリームを受け入れるばかりか、そのようなスケールの大きいことが好きな民族である。


しかしながら、次に出発するツアーは午後だと言うので、結局、ツアーに参加することは止めてしまった。


・代わりに昨日は見ることができなかった、ゴーダへ行く途中にあるアザラシの浜に行く。ここも既に多くの人が来ていた。しかし、野生のアザラシの数は、人の数よりも多いくらいだった。ただ寝転がったまま、少しも動かなかったが。海から吹き付ける水を含んだ強い風が冷たく、ジャケットを着込んでも寒いくらいだった。他の観光客の多くは半袖のTシャツ姿が多かったが、車から降りて記念撮影をして、また直ぐに行ってしまった。


・自分は少し離れた所を歩いてみようと、草原を少し行く。そこは後ろを振り向かなければ、正に大自然の中にたった一人きりだった。海を見れば、あちこちで二頭ずつのアザラシが奇声を発しながら追いかけっこをしている。此の様な風景を観ている人は他にだれもいなかったが、考えて見ればアメリカ人の積極的な保護が有って、このような景観が維持できているのだろうと思う。皆、きちんとルールを守っているところは、偉いと思った。ゴミが何処にも落ちていないし。


・一方では、トイレに行けば、こんな僻地でもチャンと水が出てきて、ペーパータオルが置いてある。途方も無いエネルギーの無駄遣いをしている国である。アメリカ人の考える省エネとは、まず自分が使いたいだけ使う量を確保してから、それ以上はムダにすることは止めようと、言っていると実感する。最近はペーパーではなくエア式乾燥機も多くなってきたが。


・さて、ゴーダに来た時に大変な事に気がついた。ガス・ステーションが有ることはあったが、有人の事務所が有る訳でもなく、機械で読むクレジットカードしか使えない。普通のキャッシャーではもちろんカードは使えるのだが、無人の処ではアメリカでは多くの機械が日本の国際カードを読み取ってくれないのである。ガソリンの残りはかなり少なく、次のガス・ステーションまで持つかどうかも自信がない。さてどうするべきか。ゴーダからS.シメオンまでは片道で100km位の距離がある。(これでも一番近いG.ステーションである。)


・考えられる手は二つ有った。一つはここでガソリンを補給する車が来るのを待って、その人のカードを使わしてもらい代わりに現金を支払う方法。もう一つは、S.シメオンの更に先のカンブリアまで戻って入れる方法である。計算するとそこまではギリギリだがガソリンは持ちそうである。結局、厚かましく頼むことは嫌だったので、来た道を再び戻ることにした。カンブリアにガス・ステーションが有るということは、昨日、泊まったモーテルの受付の人が教えてくれていたのである。それなのに、ゴーダで入れることばかり考えていたので、モーテルを出る時にその町で補充してくる案はすっかり忘れてしまったのだった。


・カンブリアという小さな町でガソリンと昼食を補充すると、すっかり身も心も満たされて疲れてしまった。リンゴを齧りながら、しばらく予定変更を考えたが、この分では当然ながら、ハイキングはカットするか、近くに一泊するかだろう。と言っても、その近くの宿泊場所といえば、温泉付きの禅道場であるエサレンしかないが、昨日来る途中で中を見せてもらいついでに価格を聞いた所では、禅セッション付きで$240だったので少し考えてしまう。ただし、エサレンの温泉はオールヌードで混浴だと言っていた。色々悩んだが、結局、温泉は他に沢山ありそうだったので、次の機会に別の所に行くことにした。


・再度、ゴーダに向かってドライブをする。不思議なことに濃い霧が出てきた。道路が濃い霧で良く見えないのでゆっくりと進む。この霧は海の上だけにかかっていて、道路の所は少し薄くなっている。そして道路の山側の崖に沿った所で、何と霧が急に消えているのである。とても幻想的な、しかも広範囲に渡る霧の世界だった。


・ゴーダを通り過ぎてLuciaに向かう途中にJolongへ行く入り口が見つかった。狭い道である。いよいよここからはあまり車の通らない山岳道路である。激しいきついカーブの上り坂が続く。カーブにはもちろんガードレール等の人工物は何も無いので、いきなり絶壁と、その向こうに海が広がって見える。眺めが最高の道路である。


・その内に海が見えなくなってしまい、完全な山道となる。段々と道が狭くなってくるが、TAJAHARAと違って、舗装してあるので全く不安がない。しかし、道路が砂で覆われているようで、タイヤが盛んに砂を巻き上げる。砂で滑るので30km/h位のスピードで走る。何もここでドリフトの練習をして死ぬことはないと考えていたら、急にカーブの所で前方から車が飛び出してぶつかってきた。自分は上りだから直ぐ止まったが、対向車がぐんぐん近づいてくる。スリップする音が激しく聞こえる。運転していたのは、若い男女のカップルだった。とっさに「バカヤロウ、ラリーヤッてんじゃないよ」と日本語で叫んでしまった。ぶつからずに済んだが、本当に1mも無かった。相手は何も言わず行ってしまったが、きっと次のカーブで震えが止まらない筈だ。本当に事故になる所だった。


・途中でトイレが近くなってしまい、2度もタイムを取る。いずれも山の中で、夕方5時だというのに眩しい太陽を背に受けて。この辺には、家もなければ対向車も見かけない山奥だ。体長が10cm位の小さな無数のリスが、ひっきりなしに道路を走って横切っていく。10m毎にリスが現れる。初めの内は注意をしていたが、それではとても走り続けることが出来ない。


・山の中を下って行くと、今度は平坦な道路になった。Jolonの村らしいのだが、家がまばらに何件かあるだけなので、休まずにそのまま通り過ぎる。道路には自分の他には全く車が走っていない。この道路にはたまにカーブがあるのだが、そこを曲がるとまっすぐに一直線にどこまでも道路が続いている。そこを時速130kmで走り抜けていく。もう夕方の6時を過ぎているので何となく急いでしまうのだ。


・そしてRXXXの近くまで来るとICのそばに、Paso Roblesという町が見えた。今夜はそこに泊まることにする。

・夕食はまだ7時だというのに明るいので、ブラブラと散歩しながら町の中心地に向かう。中心地と言っても、店が4軒ばかりあるだけだが、その中からピザ・ハウスに入ってディナーを食べた。もちろん歩いてきたので、ハイネッケン・ビールを二杯飲む。広い店は何処から客が来るのか、殆どいっぱいだった。のどかな雰囲気などではなくて、周囲の壁に据え付けられたテレビが、フットボールの試合をやっており、煩いノイズを出していた。ビデオかも知れない。

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